3時間で50キロを突破した背景は、私たちに何を教えてくれるのでしょうか。

3時間で50キロを突破した背景は、私たちに何を教えてくれるのでしょうか。

COROSのエリートアスリートで、2018年ボストンマラソン女子チャンピオンであり、アメリカ代表としてオリンピックに出場したデジレ・リンデン選手は、4月13日、50kmロードレースの女子世界記録を更新し、2時間59分54秒というタイムで、この距離の女子記録で3時間の壁を突破しました。

本人の許可を得て、「3時間で50キロを突破」したときの運動データの詳細を入手しました。ランナーの中には、エリートアスリートの1回の運動データなどは、一般のスポーツ愛好家にとっては同じレベルのパフォーマンスを発揮することは不可能なので、参考値としては限界がある、と考える人もいるかもしれません。しかし実は、記録を更新したランのデータ詳細を簡単に分析することは、多くのランニング愛好者たちにもメリットがあるのです。

リンデン選手はインチ単位を使用しているため、重要なランパラメータを換算する必要があります。今回のチャレンジでの同選手の平均ペースは約3分36秒/km(実際のゴールタイムに基づく)、平均ストライドは約148センチでした。

⭕️ピッチとストライドがパフォーマンスの突破口

リンデン選手の身長は155センチですが、データによると平均ストライドが148センチであることがわかります。実は、背の高い男性ランナーの多くは、このような大きなストライドを持つのに苦労しています。これは、ある程度においては、身長によるストライドの制限が絶対的なものではない ことを証明しています。効果的なランニングフォーム、筋力や柔軟性のトレーニングにより、ストライドを効果的に伸ばすことができるのです。

一方、リンデン選手のレースを通しての平均ピッチは194歩/分で、身長とストライドを考慮すると、マラソンでの高いピッチがレースでの競争力をまさしく確保しています。
詳細なグラフを見ると、高いピッチ数と大きなストライドを達成したリンデン選手は、レースを通して大きな変動もなく安定したピッチとストライドを維持していた ことがわかります。

一般的なランニング愛好者の場合、ピッチやストライド数は大きければ大きいほど良いというわけではなく、自身の状況を考慮して、トレーニングやレースに最も適したピッチやストライド数を選択することが、パフォーマンス向上の一つの鍵となります。 可能であれば、自身の運動データを総合的に分析する必要があります。

⭕️ペースとは単なる数字ではない

長距離ランでは、運動目標を達成するためにペース管理が非常に重要です。今回の50キロチャレンジでは、リンデン選手は3分36秒/km程度の平均ペースを達成しましたが、この距離のランでは、全行程の平均ペースに注目するだけでは全く十分ではありません。

ランナーはセグメントペースの分析にもっと重点を置く必要があります。例えば、リンデン選手の今回のランでは、全行程イーブンペースのプランを取り入れていますが、上のアプリのトレンドグラフを見ても、リンデン選手のペースは比較的安定した状態であることがわかります。

さらにデータを分析すると、次の結論が検証されます。リンデン選手のレース前半と後半の平均ペースの差は、わずか1秒以内の差です。これは、各セグメント(1セグメントが1マイル)の平均ペースが一様に安定した値であることに対応しています。全行程の平均ペースを基準にすると、各セグメントの平均ペースは全行程の平均ペースを中心に少しずつ変動していることがわかります。

しかし、注目すべきは、ペース変動という観点からみると、リンデン選手の各セグメントペースの標準偏差は、前半は2.42、後半が3.21と、後半のほうが前半よりも若干ペースが安定していなかったことです。

また、トレンドグラフを見ても、フィニッシュ付近のマイルでは、平均ペースが全行程の平均ペースよりも基本的に上回っていることがわかります。本人がインタビューで語っているように、「最後の5マイル(約8キロ)は、小さからぬチャレンジ」だったのです。

⭕️ペースメーカーとランニングパワー、どちらを選ぶ?

長距離運動で安定したペースを維持したいランニング愛好者にとっては、良好な身体能力と身体の素質を基礎とした、強い身体感覚と正確なデータのサポートがそのための手段となります。COROSウォッチの正確なラップ平均ペースは、リンデン選手が各マイルを完了した後に次のマイルのペースを正確に調整するのに役立っています。 ランニング愛好者は、リンデン選手のような強い身体感覚で正確な平均ペースを維持することはできないかもしれません。また、通常のラントレーニングでは、ペースが路面状況などの環境要因に左右されることがあります。そのため、日常のランでは、ペースだけを参考基準にすると偏りが生じる可能性があります。

COROSウォッチは、多数のセンサーの相乗効果によりランニングパワーの算出を可能にし、ランニング愛好者はラン中のエネルギー出力を効果的に把握することができます。 リンデン選手のランニングパワーのデータは、ラップペースと同様に安定しており(下のグラフのとおり)、ラン中に長時間安定した出力を維持していることが証明されました。

一般的なランナーにとって、ランニングパワーは強度の指標として、自身の日常トレーニング中の効果や出力の安定性を理解することにも役立ちます。 例えば、毎回環境の変化が大きいLSDトレーニングでは、単純にペースだけを考えるのではなく、一定のパワーを維持することがトレーニング効果の維持に効果的です。下図のように、傾斜度が変わるとペースが落ちるにもかかわらず、リンデン選手はパワーが安定しているため、トレーニング強度の安定性が確保されています。

すべてのランニング愛好者にとって、自分や他人の1回のランのデータを分析することは、しばしば多くのインスピレーションをもたらすことになります。自己の能力を突破したトレーニングであれ、思うようにいかなかったレースであれ、それらはすべて貴重な財産であり、その背後には自身が絶えず前進するための鍵があります。